今、私たちが生きている社会は、持続不可能な社会です。
将来展望が開けないまま、時間が過ぎてしまいました。その間、暴力的な力によって、地球環境の破壊と弱者の搾取は、耐え難いほどにまで進んできています。
未来に対する希望が持てないと、心が病気になってしまいます。今の社会、暮らし方は未来につながっていません。未来からも、そして過去からも断絶してしまっていることが、私たちの心と魂をすっかり薄っぺらいものにしてしまっているのではないでしょうか。若者や子どもたちは深いところで混乱しています。
「現代日本の開花は皮相上滑りの開花であるという事に帰着する。……事実やむを得ない、涙を呑んで上滑りに滑って行かなければならない」。夏目漱石が日本の外発的な近代化に対してこのように書いたのは、1911年。もう百年近くも前です。
このような上滑りの「進歩」「発展」には、もういい加減、終止符を打たなければならないのではないでしょうか。地に足のついた、地域からの、そして自分自身の心と体につながった、内発的な運動を起こしていかなければなりません。過去につながり、未来につながる暮らし方、生き方を実現していかなければなりません。
ヘレナさんは、ヒマラヤの辺境ラダックでの実践と洞察を踏まえて、彼女がNGOの本部を置くイギリスを中心として、社会を少しでもまともなものにするために、本質的な問いかけと実践を続けてきました。この『食と農から暮らしを変える、社会を変える:行動のためのヒント集』の第1章から第3章(原題:アクションパックAction
Pack)は、イギリスでの実践を踏まえ、その運動を広げるために書かれました。
その考え方、ノウハウは私たちにも大変参考になると思います。問題の根っこは普遍的であり、変革のための核心は共通しているからです。そこからヒントをもらいながら、日本の状況の中で、日本の状況に合わせ、またその状況を乗り越えるために、独自の行動を始めていきませんか。各人の生きている現場で自らの手で。
そのような行動は、実はいろいろな分野でいろいろな人たちによってすでに始まっています。徐々に水面下で、問題の根元や変革の核心に対する共通認識が生まれてきているようにも感じています。ヘレナさんが言うように、「私たちが友人や近隣の人びとと連帯することで、変化はとても早く、拡大していきます。また、みんなで目的を共有しているという感覚が、精神的な強さを育み、行動のための意欲を与えてくれます」。この小冊子がそのようなみなさまの実践と連帯に少しでもお役に立てればと願わずにいられません。
この「食と農から暮らしを変える、社会を変える」は、できるだけ多くの人にそのメッセージが広まることを目指しています。それぞれのページや冊子全体を自由にコピーしてください。そしてそれを友達や同僚に渡してください。もし印刷された冊子が欲しい場合は、懐かしい未来ネットワーク事務局にメールでご連絡ください。
※冊子ご購入についてはこちらをご参照ください。
冊子の内容はオープンソースとし、みなさまが日本におけるそれぞれの現場の状況に合わせて情報やアイディアの追加や変更を自由に行い、その実践をさらに集結することによって、持続的にこの冊子自体を発展させていきたいと願っております。日本における関連組織もどんどん足していきたいです。
日本語版作成の経緯にも触れておきます。
第1章と第3章は、ISEC(エコロジーと文化のための国際協会)が作成した英語版を元に、懐かしい未来ネットワークの有志が翻訳しました。英語版はイギリスの状況に基づいて書かれているため、読者が遠い国の話としてではなく身近な日本の状況と結び付けて考えることができるよう、若干の訳註をつけ、情報を追加しました。
また、ISECは食と農に関するこのアクションパックを作成する前に、グローバルからローカルへという運動を展開してきました。その資料『グローバルからローカルへ:モノカルチャーへの抵抗とコミュニティの再建』(原題:From
Global to Local。ISEC作成。日本語改訂版開発と未来工房作成。2006年4月)を第4章として、ヘレナさんが2003年に寄せてくれた日本の人たちへのメッセージを第5章として、冊子の中に含めることにしました。
作成はさまざまな有志が参画することで進められました。第1〜3章の下訳作成を担当したのは、柏木文、田河恵子、山崎一美、小川浩一、加賀美思帆。監訳・構成は鎌田陽司が担当。編集委員会は、鎌田、小川、帰山寧子、佐藤明美。イラストは横井佐智子、グラフィックデザインは川尻まなみが担当しました。そして、印刷のための費用の一部は、趣旨に賛同した有志による出資金によって賄われました。
それでは、みなさまに良き風が吹きますように。
私たちが担うべき責任を少しでも果たせますように。
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